最貧国の一つ、モザンビークを訪れました。この国には、かつての奴隷貿易の拠点だった島(今は世界遺産です)があり、そこから黒人奴隷が世界へ連行されて行きました。また、ポルトガルとの独立戦争を経て1992年に内戦が終了しましたが、中部地域の一部では今でも武力衝突が絶えません。そんな過去と現在が交差する最貧国モザンビークのさらに無電化農村地帯で、これから農民向けモバイル銀行を設立するのが、私の組織の役員でもあり、NBF/ADM社長である合田真氏です。人間の生存にとって絶対的不可欠なエネルギー・食料と、モバイル銀行の金融を地域単位で絡めることで、農村コミュニティの自立モデルとしてのエネルギー・食料・金融の地産地消を展開されます。合田氏は、数年前より、農民と共に、ヤトロファという植物を栽培して作るバイオ燃料事業や、米を買い取り精米・販売する事業を営む中で、無電化地域で、掘った穴に現金を埋めて保管したり、送金のために現金を持ち歩くしかなかった農民の現実を目の当たりにし、それら現金を安全に保管・管理する電子マネー事業を開始し、人々の暮らしを大いに便利にしました。ケニアでは、携帯電話会社が運営する現金を電子化して管理・送金するシステムM−Pesaが成功しています。しかし銀行のライセンスがないと資産運用ができないので、携帯電話会社では利用者に利益を還元することができません。合田氏が銀行をつくるのは、預けてもらった資産を運用し、利益を農村の人々に還元したいと考えたからです。つまり、金融ビジネスが最初にありきではなく、生活に根ざしたエネルギーや食料が地産地消で円滑に行き交うため、安全に現金を保管することが原点であるため、預金者個人に対する利子支払い前提にした従来銀行モデルではなく、銀行全体の利益から、その配当を個人ではなく、農村集落ごとに支払いをする画期的なソーシャル銀行モデルなのです。長い植民地時代と内戦を経て、モザンビークの人々は互いに対立し、農村コミュニティの結束は弱いままです。ここで利益を個人ではなくコミュニティに還元することで共有財産ができ、皆で議論し、コミュニケーションが深まる。農村自立へのプロセスです。そして、このモデルは、すなわち世界のアンバンクド”Unbanked”(銀行のサービス外の人達)24 億人の自立に向けて、地産地消の単位ごとに世界展開可能なモデルだと言えます。このエネルギー・食糧の生産・流通を基盤としIT×金融を絡めた合田氏のプロジェクトと、今月からルワンダ他で始める我々の戦争・飢餓の原体験を持つ若者への IT×教育プロジェクトとで連携をし、マネー資本主義がまだ深く浸透していないアフリカの地で、新たな資本主義経済3.0モデルを進めていきたい。そんな志を実践に移すために、今回、モザンビークの現場を訪れ、今後の新たな地平が大きく拓けました。この後はルワンダです。